研究概要 |
これまで、我々はHPVの癌遺伝子蛋白の発現に伴い、Rb蛋白機能調節にあたるp16蛋白がヒト子宮頚部異形成や子宮頚癌において過剰発現していることを世界で初めて報告した(Am J Pathol,1998)。この結果は、P16蛋白が病理組織診断上の非常に優れたマーカーになることを示したものであり、以来、子宮頚癌におけるp16蛋白過剰発現が多くの研究グループによって確認され、病理細胞診断の分野において応用が始まってきている。我々はこのp16抗体を細胞診液状化検体(モノレイヤー標本)にも応用し、p16の免疫染色が、細胞診標本上で腫瘍細胞の同定にきわめて有用であること報告した。(Cancer cytopathol,2004)。この検討ではHSIL以上の病変を検出する手段として、PCR法によるHPV検出よりも、p16免疫染色法はより高感度かつ特異性の高い検査方法であることが明らかであると同時に、現在行われているPap法による形態学的な異型細胞同定法を補助する手法としても有用であり、精度管理にも応用可能であると示唆していた。また、p16と同様に細胞周期調節蛋白の一つで、G2チェックポイントに働く蛋白である14-3-3sigma蛋白についても同様の検討を行ったところ、異形成から扁平上皮癌、および腺癌にいたるまで広く高発現していることが明らかになった(Pathol Int,2004)。これはp16とともに14-3-3sigmaが子宮頚癌・異形成のすぐれたマーカーになる可能性を示唆していた。さらに、子宮頚癌・異形成病変からmRNAを抽出し、real-time PCRを用いたp16のmRNAの定量化を試みたところ、有用との知見を得ている。
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