研究概要 |
【はじめに】軟部腫瘍はその種類の多さ,希少性,組織像の多彩さから病理組織学的診断に難渋することが多い.近年,多くの肉腫に特異的キメラ遺伝子が同定され,その検出が有力な病理補助診断になりつつあり.一方,cDNAアレイは同時に多数の遺伝子の発現解析が可能な技術であるが,中でもcDNAマクロアレイ法は,限定的な数の遺伝子の詳細な解析に適している. 【目的】肉腫特異的なキメラ遺伝子のcDNAマクロアレイ法による検出法を確立し,新たな肉腫診断法として位置付ける. 【方法】特異的キメラ遺伝子を有する肉腫(EWS-Fli13例,EWS-ATF14例,EWS-WT12例,EWS-CHN2例,TAF2N-CHN1例)に関して,病理組織標本(ホルマリン固定パラフィン包埋材料)より抽出したRNAよりcDNAを作成後,キメラ遺伝子の様々なエクソン特異的プライマーによるビオチン付加PCR法を施行し,各キメラ遺伝子のプローブを搭載したメンブレンとハイブリダイゼーションを行い,化学発光法により検出した. 【結果】個々の肉腫に特異的なプライマーのみの検出系ではEWS-CHN, TAF2N-CHNを除き,シグナルの検出が良好であり,キメラ遺伝子の融合エクソンの同定が可能であった.一方,すべてのプライマーを混合した場合には非特異的シグナルの増強が認められ,本来のシグナルの同定が困難になる傾向があった. 【結論】cDNAマクロアレイ法によるキメラ遺伝子同定法は構築可能であるが,特異性に関して改善を要すると考えられた.特に,1)PCR反応時の非特異的増幅,2)PCR法によるラベリング,3)ハイブリダイゼーションの効率に関してさらなる検討が必要である.EWS-CHN, TAF2N-CHNでは検出感度に問題があると考えられた.
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