研究概要 |
【はじめに】軟部腫瘍のキメラ遺伝子の検出にcDNAアレイ技術が適用できれば,一度に複数のキメラ遺伝子について検索が可能となり,病理診断上極めて有用である.我々は,平成17年度までにmultiplexPCR-cDNAアレイ法に.よるキメラ遺伝子の検出法の確立し,さらに特異性の問題点を改善するためにin vitro transcription法を組み合わせた新たな検出法を構築した. 【目的】本法を通常の病理診断に応用するためには,キメラ遺伝子検出過程(プローブアレイ作成過程を除く)が,病院内の病理検査室レベルで実施できる必要がある.その方法について,詳細な検討を行った, 【方法】東京大学附属病院病理部において,本法を施行した.キメラ遺伝子を有する軟部腫瘍の凍結検体を用いて,(1)tota1RNAの抽出、(2)1^<st> strand cDNA synthesis,(3)Nested PCR,(4)ln vitro transcription法によるbiotin付加RNの作成,(5)プローブ(アレイスライド上)へのhybridization,(5)シグナルの検出,のすべての過程を施行した.アレイスライドは通常の病理検査に用いられるプレパラートに検出用メンブレンを貼り付けたものを予め作成した. 【結果】機器としては(2),(3)に使用するサーマルサイクラーと(5)のためのハイブリバッグ,シーラー,恒温振盈槽を用意すれば,病理検査室レベルの設備で充分実施可能であり,また安定した良好な結果を得ることができた.また,全過程を3日以内に実施可能で,病理標本作成診断過程に充分組み込むことが可能と考えられた.また,得られた結果は他の組織標本プレパラートと同様に保存することが可能であった. 【結論】本年度(平成18年度)はmultiplexPCRcDNAアレイを用いたキメラ遺伝子検出法の実践的な病理診断への応用方法が確立された.
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