研究課題/領域番号 |
16590271
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
川島 篤弘 独立行政法人国立病院機構, 金沢医療センター(臨床研究部), 研究員 (20242563)
|
研究分担者 |
源 利成 金沢大学, がん研究所, 教授 (50239323)
|
キーワード | インテグリン / 大腸癌 / TGF-β1 / αVβ8 / β-カテニン / 浸潤・転移 |
研究概要 |
TGF-βは、細胞増殖や細胞外基質のリモデリングなど細胞のホメオスタシスに重要な役割を担っている。TGF-βが活性化するためには、潜在型TGF-β結合蛋白との結合が解離してTGF-β受容体と結合することが必須である。最近ではTGF-β1の活性化にαVβ6、αVβ8のインテグリンが関わっていることが明らかになった。現時点ではインテグリンによるTGF-β1の活性化がごく限られた疾患でのみ関与が指摘されているが、癌の浸潤・転移との関わりは不明である。また大腸癌ではβ-カテニンの浸潤先進部における選択的活性化がんの悪性度を決定するという知見を研究分担者の源が報告し、新たながん遺伝子として注目されている。多くの分子種を構成するβ1インテグリンは、β-カテニンのがん化シグナルにも影響を与える重要な因子の1つである。平成16年度では、ヒト大腸癌におけるβ-カテニンの発現パターンと各種インテグリンの発現およびリンパ節転移との関連を検討した。すなわち、大腸癌の手術材料67例(男性37例、女性30例、平均68.0才)のパラフィン切片および凍結切片を用いて、インテグリンα3β1、α5β1、β4、αVβ6およびβ8を染色し、臨床病理学的事項との相関を検討した。浸潤先端部では、β-カテニンの核内集積がみられた17例のうち14例(82%)でリンパ節転移がみられた(p=0.0004)。またβ8が陰性であった18例のうち12例(67%)でリンパ節転移がみられた(p=0.0192)。αVβ6陽性例の内76%、およびα5β1陽性例の内92%はβ8も陽性となったが(p=0.0268)、β-カテニンやリンパ節転移との相関は得られなかった。α3β1、β4は、大腸癌のほぼ全例で陽性であった。以上より、β-カテニンが浸潤先端部で核内集積し、かつβ8陰性の症例は、有意に臨床病期が進行しており、リンパ節転移も高頻度であった。大腸癌では、αVβ8の発現低下のために、αVβ8によるTGF-β1の活性化が起こらず、TGF-β1による細胞増殖の抑制が解除され、結果的に大腸癌の浸潤・転移を高めることになる可能性が示唆された。
|