研究概要 |
肺癌、骨軟部腫瘍を中心に多臓器の固形癌で、細胞周期制御因子の細胞増殖能、分化、アポトーシスへの関与を解析し、癌遺伝子の増幅と併せて悪性度を規定する複数因子による、包括的予後診断を試みた。 1)我々が培養細胞で見出し、報告したcdk4/cyclin D1の過剰発現とアポトーシスの関連性は、実際のヒト肺癌でも認められ、in vivoでも起こる現象で、また予後との相関があることを初めて明らかにした(Int.J.Cancer, 2004,第92回日本病理学会発表)。 2)上皮系腫瘍で過剰発現の報告の多い上皮成長因子受容体(EGFR)は、大腸癌で約10%に過剰発現が、8%で遺伝子増幅がある、また肺癌では34%に過剰発現が、22%で遺伝子増幅があることを報告した(Cancer.2005,第64回日本癌学会発表)。 3)EGFRは肉腫でも発現が見られ、悪性線維性組織球腫の1%で遺伝子増幅、ポリソミーを伴った過剰発現を認めた。このような症例にはEGFRの標的療法が適応となりうるが、その下流のMAP kinaseの活性化とは相関しておらず、治療に際しては各症例における形質の詳細な検索が必須と考えた(Mod.Pathol.2004,第64回日本癌学会発表)。 4)WHO新規約でのbronchiolo-alveolar carcinoma (BAC)は日常診断に難渋する症例があるが、過去10年の早期腺癌症例全例を特殊染色を施して再検索した結果、非浸潤性のBACでは局所再発、リンパ節転移とも全く認められない事を報告した(Ann Thorac Surg, 2004)。 5)浸潤能規定因子としてクローニングされたAMF (autocrine motility factor)は、骨軟部腫瘍の約80%で発現を認めたが、細胞内蛋白量ではなくmRNA高発現群で有意に高い遠隔転移を認めた。
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