研究概要 |
多臓器の固形癌で、細胞周期制御因子の細胞形質変化への関与、癌遺伝子増幅等の複数因子による包括的悪性度診断を行った。 1)我々が培養細胞で見出し、報告したcdk4/cyclin D1の過剰発現とアポトーシスの関連は、肺癌というin vivoでも起こる現象で、予後との相関も含め報告した(Int.J.Cancer他). 2)上皮系腫瘍で過剰発現の多い上皮成長因子受容体(EGFR)は、大腸癌で10%に過剰発現と遺伝子増幅が、肺癌では34%に過剰発現、22%で遺伝子増幅がある事を報告した(Mod.Pathol, Cancer.他)。 3)肺癌でのEGFR下流因子の検索で、EGFR遺伝子増幅例、遺伝子変異例(Gefitinib感受性例)ではStat,Aktの活性化が全く異なる事を明らかにした(投稿中)。 4)EGFRは肉腫でも発現が見られ、悪性線維性組織球腫の1%で遺伝子増幅、ポリソミーを伴った過剰発現を認めた。しかしMAP kinaseの活性化とは相関せず、遺伝子変異例は極少数であり、EGFR標的療法の適応となりにくいと考えた。(Mod.Pathol.他). 5)WHO新規約でのbronchioloalveolar carcinomaに関し、過去10年の早期腺癌全例を再検索した結果、局所再発、リンパ節転移とも全く認められない事を報告した(Ann Thorac Surg)。 6)浸潤能規定因子としてクローニングされたAMF(autocrine motility factor)は、良悪性に係わらず骨軟部腫瘍の80%で発現を認めたが、細胞内蛋白量が低く、mRNAが高い群で高率に転移を認めた。肺癌の検索でも同様の結果で、細胞内蛋白量は分化誘導因子としても機能しており、細胞外への分泌能が高い腫瘍群で予後が不良であった(J.Pathol.他)。
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