研究概要 |
CGH解析の際の標識法は、Nick translation(NT)が主であったが、我々は、標識にRandom Priming(RP)を用いた解析を行い、RP標識では、lossが、NTでは、gainが強調されるという傾向があることを報告した。今年度は、粘膜内胃型腺癌を中心に、胃型もしくは胃型優位型と考えられる粘膜内のsignet ring cell carcinoma(SIG)及び腸型の腺腫などをRP標識にて解析し、これまでNT標識を用いて得られた結果との相違点についても検討した。RP標識の結果では、同じ胃型であっても胃型分化型胃癌の方が、SIGよりも染色体変化数が多く、そのパタンも大きく異なっていた。これまで、NT標識を用いたSIG及びpoorly differentiated adenocarcinoma(POR)の系譜解析から、進行期のPORでは早期のPORに比べて3p-,7p+,15q+,18q-がよくみられることを報告したが、これらの染色体変化は、多くの粘膜内胃型腺癌にも認められ、その一部が進行期のPORに移行する可能性が示唆された。また、TP53のmutation及びLOHを用いて解析し、TCを伴うPORがTCに由来することを報告したが(Yoshimura et al., 2006)、粘膜内胃型腺癌と腺管成分(TC)を有する進行期POR及び粘膜内PORのCGH profileが大きく異なり、粘膜内胃型腺癌が進行期PORへ移行することが比較的まれであることが示唆された。これまでのNT標識に用いたサンプルがmicrodissectionしやすいPOR1にバイアスがかかっており、胃型分化型腺癌が進行期POR2に移行する可能性もある。また、今回のCGHの検討は、RP標識及びNT標識の双方を用いており、標識の違いによる結果の違いの可能性もある。今後、これらの点を明らかにすることが課題である。
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