研究概要 |
本研究は、申請者らがこれまでマウス骨肉腫細胞株を用いたRNAサブトラクション法により見い出した高肺転移亜株で高発現維持されているValosin-containing protein(VCP)が種々のヒト癌における予後因子であるかどうかということ、並びにその発現制御機構について調べることを目的として行った。 本年度、我々はVCP発現パターンが肺癌、前立腺癌、膵臓内分泌腫瘍、食道癌、歯肉癌においても腫瘍の転移、予後と相関する因子であることを明らかにした。腫瘍細胞細胞質内でVCPが高発現している腫瘍は、低発現性の腫瘍に比べて、腫瘍再発、生命予後ともに悪い傾向にあり、特に遠隔転移の頻度が高い傾向にあった。(Ann.Surg.Oncol.2004;11:697-704,Clin.Cancer Res.2004;10:3007-3012,Oncol.2004;66:468-475,Ann.Oncol.2004;15:1432-1438,Clin.Cancer Res.2004;10:5558-5565) VCPを高発現していることが分かっているヒト乳癌由来の培養細胞株MCF7を用いて、VCPプロモーター領域の転写活性の検討を行った。VCPプロモーター領域の様々な長さの塩基配列を作成し、それをルシフェラーゼ発現ベクターに組み込み、VCP転写を司る転写因子の検討を行った。その結果、-500bpまでの塩基配列の導入で転写活性が上昇することが分かった。これについては、引き続き詳細な検討を加え、鍵となる転写因子の検討を加える予定である。
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