研究概要 |
平成16年度の主な研究計画であるPeroxisome proliferators-activated receptor(PPAR)-γ2遺伝子導入ウサギの作出を行った。 まず,脂肪組織特異的にPPAR-γ2を過剰発現するように,脂肪細胞を標的にした発現ベクターであるAP2にラットPPAR-γ2 cDNAを挿入したDNA構築物を作成した。これを,倒立顕微鏡にセットしたマイクロマニュピレーターを用いて,マイクロインジェクション法によりウサギ受精卵前核内に注入した。ウサギ受精卵の採取には,濾胞刺激ホルモン(FSH)もしくは妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG)を注射して過排卵処理を施した雌ウサギから採取した。22匹の雌ウサギより483個の卵を採取して342個の受精卵にインジェクションを行い,このうち225個をヒト絨毛性腺刺激ホルモン(hCG)の注射により偽妊娠を誘導した8匹の仮親ウサギの卵管内に移植した。 その結果,5匹が妊娠し,18匹の仔ウサギを出産した。胚移植により生まれた仔ウサギの耳生検を行いDNAを抽出して,ラットPPAR-γに特異的なプローブもしくはプライマーを用いてSouthern blot法およびPCR法を実施したところ,これらのうちの一匹(雌)にラットPPAR-γ2遺伝子が導入されていることが確認された。さらに,この遺伝子導入が確認されたウサギをファウンダーとして野生型の雄ウサギを交配しF1ウサギを得て,組織での導入遺伝子の発現についてNorthern blot法で検討したところ,遺伝子導入ウサギの組織(特に大動脈とマクロファージ)で明らかにコントロールより高いPPAR-γ2 mRNAの発現が確認された。現在,今後の計画を実施するためPPAR-γ遺伝子導入ウサギの大規模な繁殖を行うとともに,生まれてきたF2ウサギを用いて体重,血清脂質などの基礎的データの採取を開始した。今進行中の実験としては(1)高脂肪食による肥満、糖代謝におけるPPAR-γ2の作用検討(2)コレステロール食負荷による動脈硬化発生および進展におけるPPAR-γ2役割の解析である。
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