研究概要 |
今までの大腸がんにおける多くの遺伝子異常の検索から,大腸腫瘍の発育・進展上では初期にK-ras遺伝子異常が高頻度に関与する腺腫・癌相関が知られている.しかし,約50%の大腸がんには遺伝子異常が確認されない野生型K-ras遺伝子であることが報告されている.この野生型K-ras遺伝子含有大腸がんにおける発育・進展について,最近大腸がんを含め多くのがんで発現し,がん抑制遺伝子の候補として注目されているPeroxisome Peoliferative Activated Receptor γ(ppar γ)に注目して検索した. 1)まず獨協医科大学(人体分子)に診断依頼がなされた大腸がん検体につき再度検鏡して,再評価した.また,組織学的分化度については前立腺腺がんで汎用されているGleason分類を利用し再分類した.その他臨床病理学的因子については診療録を参考にして収集した.以上の結果を整理し,コンピュータ上でファイルした. 2)コンピュータ上でファイルした検体から,組織学的に従来の腺腫・癌相関とは異なると背景であると判断されるものを抽出し,以前報告した方法(Tomita S, et al. Int J Mol Med.9(5):485-488.2002)でK-ras遺伝子異常とppar γ遺伝子多型(Pro/Ala)について検索する準備完了した.またppar γのmRNA発現については確立させた. 3)今回はK-ras, ppar γ双方の遺伝子の標的蛋白との関係を検索することが主な目的である,対象とするCyclin D1,COX2についてのmRNA発現および免疫組織学的検討方法については部分的には完了した.しかし,Cyclin D1の免疫組織学的検討方法については不安定であることが判明したため,Cyclin D1陽性であるマントル細胞性リンパ腫を陽性コントロールとした検討を施行後,来年度で検討することとした. 4)上記の内容に関してH17年度の癌学会および消化器病週間に発表予定である.
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