研究概要 |
約50%の大腸がんには野生型K-ras遺伝子症例の存在が報告されている.野生型K-ras遺伝子大腸がん症例の発育・進展の解明するため,Peroxisome Proliferator Activated Receptorγ(pparγ)に注目した. 1)獨協医科大学(人体分子)に診断依頼がなされた大腸がん検体につき再度検鏡して,再評価し,コンピュータ上でファイルした。 2)パラフィン包埋検体からがん部、非がん部でのppar・遺伝子異常およびK-ras遺伝子異常を以前に報告した方法(Tomita S, et al. Int J Mol Med9(5):485-488)で検索した。検索した10症例(男/女:10/0;平均年齢:57歳)の進行大腸がん症例(組織型:Wel4,Mod5,Por1)を対象とした.pparγ多型はPro/Pro9例,Pro/Ala0例,Ala/Ala1例であった.K-ras codon12遺伝子の状態は野生型7例,変異型3例であった.また以前に報告した結果と同様にAla/Ala1例の組織型は低分化腺癌であった. 3)今回はそれぞれの遺伝子に共通した標的蛋白であるCyclin D1,COX2に対する免疫組織学的検討を施行した.昨年度までの予備実験では従来使用していたCyclin D1抗体の精度(染色態度等)に問題であった.そこで今回はCyclin D1遺伝子異常有陽性コントロールであるマントル細胞性悪性リンパ腫を対象とした検討をした.その結果,従来使用していたDako社,MBL社でなくLAB VISION社製の抗体(clone SP4)で核内陽性所見となる的確な条件設定を確認した. 今回確定した至適条件でCyclin D1の核内陽性像を全例で認めた.COX-2は4例で陽性であった. 4)pparγ遺伝子多型およびK-ras遺伝子異常とそれぞれの標的蛋白発現との問に優位な相関は認められなかった.またパラフィン検体でのmRNA発現条件設定が困難であり免疫組織学的検討結果との関係は確認出来なかった しかし遺伝子異常と正常粘膜およびがん周囲粘膜でのCyclin DI染色態度において差異を認めた. 5)今後さらなる検討を施行しているところである.
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