研究概要 |
A.心筋の系統発生上の原則 心筋線維のサイズは多様性が著しい。この事実の根拠の一つを系統発生上の特性に求めて両生類から恒温哺乳動物の頂点であるヒトに至る心筋線維のサイズの実態を調査した結果は系統発生とともに心筋の可塑性plasticityを増大させながら心筋線維のサイズは徐々に細分化していると言う事実である。 B.筋原線維の生理的多様性に関する研究 正常左室心筋に観察野を絞って筋原線維の多様性を比較検討した。 結果は1)normal distribution, 2)Overcharged, 3)fine fibrilar, 4)size irregularity, 5)depletedの五型が区別された。夫々のグループ特性を摘記すると、1)overchargedはしばしば青年期から壮年期に多く、稀に老年期にもみられる。2)fine fibrillarはあらゆる年齢層に発現し、体質的な動向と思われた。3)size irregularityは加齢と共に増大している。4)depleted typeは高齢者に圧倒的に多い、などである。 C.肥大心における筋原線維の在り方について 今期は病的心に観察を移す前に萎縮と肥大という反応生理的な属性をもとに観察した。 1)心筋線維の縦分裂はLinzbachの臨界重量500gまでは抑えられ、心筋線維は肥大傾向を辿る。 2)心筋肥大と共に筋原線維のサイズも増大する。 3)しかし心重量500g以上ではむしろ混在する細型原線維の数が増大していく。 4)筋原線維の分布はmonocock型より中軸にもchargeされやすい。この傾向は逆に萎縮心筋線維において特に顕著である。
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