研究概要 |
今年度は,以下の成果を得た. 1)大腸腫瘍60例を対象に,腫瘍細胞の細胞分化に関して検索する目的で,胃型マーカー(MUC5AC, HGM, MUC6)と腸型マーカー(MUC2)を用いて免疫組織化学的検討を施行した.さらに腫瘍発生のメカニズムに関する情報を得るために,βカテニンとp53についても同様に検討した.このうちの17例(hyperplastic polyp:1例,serrated adenoma:2例,tubular adenoma:10例,adenocarcinoma in adenoma:2例,well differentiated adenocarcinoma:2例)につき,病理学的な評価を終了した. 2)HUC5AC, HGM, MUC6は正常大腸粘膜上皮では全く発現が認められなかったが,大腸腫瘍では,MUC5ACが15/17例(88.2%),HGMは10/17例(58.8%),MUC6は5/17例(29.4%)で陽性であった.MUC2は正常大腸の杯細胞でのみ発現が認められた.大腸腫瘍では16/17例で陽性であった.形質発現に基づく分類では,tubular adenomaの1例とwell differentiated adenocarcinomaの1例は腸型であったが,その他は全て胃腸混合型の形質を示した. 3)βカテニンの発現は全例で細胞膜に認められ,異所性発現(細胞質,核)は確認されなかった.また,hyperplastic polyp 1例,serrated adenoma 1例以外の15例では,p53の過剰発現が観察された. 4)以上の結果より,ほとんどの大腸腫瘍では胃型の形質発現がみられ,腫瘍の発生あるいは増殖との関連が示唆された.
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