研究概要 |
我々は、最近、老人性EBV関連B細胞リンパ増殖症Senile EBV-associated B-cell lymphoproliferative disorderの疾患概念を世界に先駆けて公表し(Am J Surg Pathol 2003;27:16)、認知せしめるに至った。加齢による免疫機能の低下を背景として発症する特異な疾患であり、治療としてインターフェロンなど免疫療法immunomodulation therapyが奏効する可能性が示唆される。本疾患は、今後前例のない高齢化社会に向かう本邦において、発生の急速な増加が懸念される疾病と云える。本研究の目的は、その病態と背景要因の詳細な解明を企図したものであり、本邦集学的な解析(臨床病理学的、分子生物学的、免疫学的および疫学的検討)を推し進めつつある。東京大学医科学研究所、福島大学、岡山大学、福岡大学などの協力を仰ぎ、びまん性B大細胞型リンパ腫を中心とする本邦大規模B細胞増殖症2,300例におけるin situ hybridization法によるEBVの有無の調査を継続して行った。その結果、150例に達する同陽性症例を同定し得た。現在、臨床経過、予後、および治療反応性を含む臨床病理学的解析を進めつつある。現在、個々の個体レベルでのEBVに対する免疫能を調べるために、患者末梢血におけるPCRによるEBVウイルスゲノム量の測定、EBV-specific T細胞の定量のための日本人HLAに依拠したtetramer開発、およびlymphoblastopid cell line (LCL)を用いたT細胞によるinterfern γ産生能測定のための体制を整備中である。本研究により加齢と発がんとの相関に関する知見の大いなる深化が期待できるものといえる。
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