研究概要 |
1.ラットに四塩化炭素(CCl_4)またはdimethylnitrosamine(DMN)を投与し,急性および慢性肝傷害を作製し,肝におけるH19遺伝子発現を検討した.その結果,H19はいずれのモデルでも発現が増強することが判明した.H19発現は細胞増殖の開始にやや遅れて始まり,増殖が停止した後,漸減した.発現の程度は傷害の程度と相関しており,CCl_4に較べ傷害が遷延するDMNモデルにおいて,より長期間にわたり持続した.また,傷害肝の組織切片をBrdU免疫染色とH19 in situhybridizationの二重染色で検討したところ,ほとんどすべてのH19発現細胞はBrdU陰性であることが明らかとなり,S期の細胞はH19を発現しないことが示唆された. 2.プライマリアディッシュ上でラット肝細胞を培養し,凝集塊(スフェロイド)を形成させ,タイプIコラーゲンゲル内に包埋培養すると,H19の発現が強く誘導された.また,培養肝細胞におけるH19発現は肝細胞の分化状態に影響を与える種々の因子(dexamethasone, TNF-αなど)により著明に変動することが明らかになった. 3.RT-PCRで増幅し,site-directed mutagenesisにより塩基配列の誤りを修正したラットH19 cDNAをpc3-EGFPベクターおよびpCAGGSベクターに挿入した.これらをリポフェクション法により初代培養ラット肝細胞に導入し,H19の発現を確認した.また,in vivoで肝細胞にH19を強制発現させるため,hydrodynamicsを利用した遺伝子導入についての基礎的検討を開始した. 4.米国プリンストン大学Dr.TilghmanからH19ノックアウトマウスを供与され,本学動物実験施設への導入および繁殖に成功した.
|