研究概要 |
GPI蛋白、中間フィラメントを標的とした乳癌細胞の浸潤・転移機構の解明を研究目的とし、これまで乳癌細胞において膜脂質マイクロドメインに局在するGPIタンパクecto-nucleotidase (eN, CD73)が、上皮間葉形質転換(Epithelial mesenchymal transition)に伴い、histone deacetylase I (HDAC1)発現と関連して、ER-乳癌細胞に誘導されてくることを報告してきた。今年度は代表的EMTマーカーである中間フィラメントvimentin (Vim)の発現誘導と、eN発現間の関連性につき検討した。 eNはリガンド刺激により、Vim存在下で細胞内局在部位が変わり、細胞質内でVim、Srcと複合体を形成したが、DNA microarray法、乳癌組織のtissue array解析で、VimとeN発現に直接的な関連性は認められなかった。免疫沈降法では、eNとVimは細胞質内で複合体を形成し、Vimのチロシンリン酸化量が増加したが、このチロシンリン酸化はSrcに依存しeNの発現量に依存してなかった。またeN自身はSrcに依存してチロシンリン酸化された。上皮間葉形質転換の過程で、eNとVimはそれぞれ独立して発現誘導されてくるが、一旦その両者を獲得すると、eNのリガンド刺激に伴い細胞質内で複合体を形成するとともに、eNはVimのチロシンリン酸化経路のbypassとして働き、上皮間葉形質転換に関与することが示唆された。 本研究内容は第65回日本癌学会総会、第96回日本病理学会総会で発表し、12th International Symposium on Purine and Pyrimidine Metabolism in Man (June,2007,Chicago, USA)で発表予定である。
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