血管内膜肥厚の形成およびその細胞起源に対しては、炎症性サイトカインによる刺激が大きな影響を及ぼすと言われる。傷害を受けた血管では主に活性化した血小板から成る血栓が形成され、この活性化血小板およびこれを足場として集積する免疫系細胞から放出されるサイトカインが重要な役割を果たすと考えられている。我々は以下の方法を用いて炎症性サイトカイン、および炎症性疾患が血小板凝集に及ぼす影響を検討した。 1)シリアンハムスター(8週齢、オス)をペントバルビタール64mg/kg腹腔内投与により麻酔し、下大静脈穿刺により採取した血液を用いてカウント法による全血血小板凝集率、および光透過法によるPRP凝集率(Platelet Rich Plasma ;多血小板血漿)を測定した。その結果、(1)IL-8のin vitro添加刺激は全血血小板凝集を軽度惹起する傾向があった。(2)IL-8は単独添加によりPRP凝集を惹起せず、またADP(アデノシン2リン酸)によって惹起されるPRP凝集を増強することもなかった。以上の結果より、健常状態においてIL-8はハムスター血小板を直接凝集させることはなく、赤血球・白血球といった他の細胞成分を介して血小板活性化に関与する可能性が考えられた。 2)ICRマウス(5週齢、オス)の飲水中に5%デキストラン硫酸ナトリウムを添加し、1週間飼育することによって慢性炎症性腸疾患(IBD)モデル動物を作成した。このIBDモデル動物用いて上記1)と同じ方法でPRP凝集を評価したところ、健常動物に比べてADPによる凝集が有意に増強した。このことから、本モデルでは比較的早い段階から血小板活性に変化をきたしていることがわかり、炎症の影響が大きいことが考えられた。
|