研究課題
基盤研究(C)
イハラてんかんラットの海馬微小神経形成異常のてんかん原性に果たす役割の解明の研究は以下のような2段階の実験によって構成されている。第1段階はIERを交配し、戻し交雑仔を得る。得られた戻し交雑仔をてんかん発作自動観察装置でモニターし表現型であるてんかん発作の有無を決定し、第2段階でそれらの戻し交雑仔の海馬を観察し微小形成異常の有無を明らかにする。平成16年度は第1段階の戻し交雑仔のてんかん発作表現型の有無をモニターした。はじめにIER雄(25匹)を選択し自動てんかん発作モニター装置で全ての動物がてんかん発作を発現していることを確認した。この動物に非てんかん雌ウィスターラットを交配して雑種第1代(F1)を作成した。更に雑種第1代(F1)とIER雄(30匹)を戻し交配し目的とする戻し交雑仔を300匹作成した。得られた戻し交雑仔が5ヶ月齢に達したらすべての動物につき、1ヶ月ごとにてんかん自動モニター装置を用いて行動観察を行った。現在のところモニターの終了した240匹中、てんかん表現型陽性動物は12匹であった。平成17年度はモニターの終わっていない戻し交雑仔の行動を引き続き観察した。その結果てんかん表現形陽性動物は50匹中2匹であった。16年度の結果と併せて戻し交雑仔におけるてんかん表現型陽性率は4.8%(14/290匹)であった。てんかん発作を発現したラット(14匹)並びに発作を発現しなかったラット脳(50匹)を病理形態学的に観察した。その結果てんかん発作を発現したラット海馬ににおける微小神経形成異常発現率率は57%(8/14匹)であった。一方発作陰性であった動物の微小神経形成異常の発現率は44%(22/50匹)であった。以上の結果より、(1)IERのてんかん発作は複数の遺伝子によって支配されていること、(2)IERにおける海馬微小神経形成異常はてんかん発作とは関連がないことが明らかとなった。したがって本実験の作業仮説である海馬微小神経形成異常はIERのてんかん原生ではないと結論された。
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