研究概要 |
1)HGFによる好中球浸潤制御: 炎症時における組織破壊の担い手である好中球浸潤に対するHGFの生理的機能を明らかにすべく腎虚血再灌流傷害のマウスモデルを用いて検討した。好中球に対する接着分子として知られているICAM-1が腎虚血時には間質の血管内皮細胞に発現していた。このマウスにHGF蛋白を投与したところ、NF-kB活性系の抑制を介してICAM-1発現と好中球の浸潤が阻害され、腎ネフロンの傷害が緩和されることが判明した。以上の成果はAm J Pathol, 166:1895-1905(2005)に報告した。 2)HGFによるTリンパ球浸潤制御: 自己免疫性心筋炎を誘起したラットを用い、心筋特異的HGF遺伝子導入法を用いてTリンパ球の活性化に対するHGFの機能を解析した。その結果、(1)活性化T細胞にはHGF受容体の発現が増加した、(2)この活性化T細胞を培養してHGFを添加すると、INF-γの発現抑制、IL-4,IL-10の産生亢進に一致して心筋ミオシン特異的なT細胞増殖が制御された、(3)in vivoでもT細胞の増殖がHGF遺伝子導入により抑制されており、これに一致して心筋傷害が軽減されることが判明した。以上の成果はCirculation Res, 96:823-830(2005)に報告した。 3)HGFによる好酸球浸潤制御: 卵白アルブミン投与により気管支喘息を誘起したマウスにHGFを投与したとこる、肺での好酸球浸潤が抑制された。そこでこのマウスから樹状細胞を単離して培養してHGFを添加したところ、好酸球の浸潤に重要なIL-5の産生が抑制されることが明らかとなった。以上の成果はJ Immunol, 175:4745-4753(2005)に報告した。 以上の結果から、HGFは白血球または血管内皮に作用して白血球浸潤を制御し、炎症/免疫応答に基づく組織傷害を抑制する機能を有することを新たに明らかにした。
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