研究課題
基盤研究(C)
黄色ブドウ球菌感染症の病態を解明するために、本菌が産生・放出するシステインプロテアーゼstaphopains(ScpA,AspB)に注目し、その病原作用を調べた。培養上清から精製したScpAをヒト血漿とインキュベートすると、内因系凝固反応を測定する活性化部分トロンボプラスチン時間が濃度に比例して短縮した。一方、staphopain Bは延長した。システインプロテアーゼに特異的なインヒビターE-64で処理したstaphopainsにはこのような作用はみられないことから、プロテアーゼ活性が関与していると考えられた。外因系凝固反応を測定するプロトロンビン時間でも、同様の結果が得られた。Staphopain Aは凝固系因子を活性化している可能性が考えられたので、凝固系因子欠損血漿を使って活性化部分トロンボプラスチン時間を調べてみると、IX因子欠損血漿のみからはstaphopain Aによる凝固時間短縮効果が認められなかったことから、staphopain AはIX因子を主として活性化していることがわかった。プロトロンビン時間ではVII因子、X因子、プロトロンビン欠損血漿でも弱いながらも凝固時間短縮効果が認められたことから、X因子、プロトロンビンも活性化しうることがわかった。線溶作用を確かめるために、staphopainsとインキュベートした血漿のトロンビン時間を測定するとstaphopain Bは濃度に比例して凝固時間を延長したが、staphopain Aでは影響がみられなかった。血漿の代わりに血漿濃度のフィブリノーゲンを使っても、同様の結果が得られた。以上の結果から、staphopain Aは主としてIX因子を活性化して凝固反応を誘導し、staphopain Bはフィブリノーゲンを切断して線溶作用を示すことが明らかになった。凝固に関係する血小板凝集作用はstaphopainsには認められなかった。
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