研究概要 |
平成16年度の研究ではヒト癌細胞株(大腸癌、膵癌)をNOGマウス脾門部、尾静脈に移植し、癌細胞株の遠隔転移能を統計的有意性のもとに定量的に評価した。その結果、低効率転移能〜高転移能ヒト膵癌細胞株を同定することができた。これらの膵癌細胞株の遺伝子発現プロファイルをDNAチップにより解析し、癌細胞株の転移能に関連する遺伝子発現変化を同定した。 研究(1):門脈血行性肝転移能、全身血行性転移能、全身リンパ行性転移能をヒト膵癌培養細胞株(Capan1,Capan2,Capan3,MIA Paca2,Panc1,BxPC3)を10^2〜10^6個をNOGマウス脾門部、尾静脈、皮下に移植し、3〜8週間観察し剖検し、肉眼的にマウス全身諸臓器の転移巣(数、大きさ)を確認した。組織標本を作製し転移巣の病理像を確認した。一部は凍結標本とし、分子生物学的・生化学的解析に供した。対照群として、同様の実験をNOD/scidマウス移植実験で行った。 研究(2):研究(1)からヒト膵癌細胞株のin vivo転移能を評価し、低転移能細胞株〜高転移能細胞株を同定し、低転移能細胞株BxPC3株を同定した。さらに低転移能の細胞株BxPC3の一部については肝転移巣をNOGマウス脾門部→肝転移病巣を反復継代移植し転移能が増加するかを確認し、高転移細胞株BxPC3LM1を作製した。 研究(3):in vivoにおける遠隔転移能の同定されたヒト癌細胞株の遺伝子発現プロファイルをDNAチップにより解析した。遺伝子発現プロファイルの相互比較を有効なものとするためにDNAチップ解析回数3回のデータを解析し、発現の有意差を検討した。遺伝子発現プロファイルの有意差から、NOGマウスin vivo遠隔転移に関与する候補遺伝子・分子としてS100A4分子を同定し、現在結果を論文として投稿準備中である。
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