研究概要 |
平成16年度の研究ではヒト膵癌をNOGマウス脾門部に移植し、癌細胞株の遠隔転移能を統計的有意性のもとに定量的に評価した。その結果、低効率転移能〜高転移能ヒト膵癌細胞株を同定することができた。これらの膵癌細胞株の遺伝子発現プロファイルをDNAチップにより解析し、癌細胞株の転移能に関連する遺伝子発現変化を同定した。ヒト膵癌低転移能細胞株BxPC3株を同定した。BxPC3の肝転移巣をNOGマウス脾門部→肝転移病巣を反復継代移植し高転移細胞株BxPC3LM1を作製した。こられの細胞株の遺伝子発現プロファイルの有意差から、NOGマウス遠隔転移に関与する候補遺伝子・分子としてS100A4分子を同定し結果を論文として投稿中である。 平成17年度の研究ではヒト大腸癌、悪性黒色腫細胞株をNOGマウス脾門部、尾静脈に移植し遠隔転移能を定量的に評価し、低効率転移能〜高転移能ヒト大腸癌および悪性黒色腫細胞株を同定した。このうち大腸癌細胞株の遺伝子発現プロファイルをDNAチップにより解析し、癌細胞株の転移能に関連する遺伝子を評価した。低転移能細胞株SW48の肝転移巣をNOGマウスに反復継代移植し転移能が増加するかを確認し、高転移細胞株SW48LM2を作製した。SW48およびSW48LM2の遺伝子発現プロファイルをDNAチップにより解析し、肝転移に関与する候補分子を探索した。大腸癌細胞株SW48LM2では膵癌細胞株において最も転移に良く相関していたS100A4の発現増強は認められなかった。現在、他の候補遺伝子について転移との相関性を解析中である。また、悪性黒色腫細胞の転移能がS100A4遺伝子発現増強に相関して増強されることを明らかにした(N.Ikoma, M.Nakamura et al., Oncol.Reports,2005)。
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