研究課題/領域番号 |
16590329
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
平林 容子 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター毒性部, 室長 (30291115)
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研究分担者 |
井上 達 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター, センター長 (50100110)
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キーワード | チオレドキシン / 造血幹細胞 / チオレドキシン過剰発現マウス / 細胞周期 / チオレドキシンノックアウトマウス / BUUV法 / 骨髄造血抑制 / ベンゼン |
研究概要 |
生体異物反応の中で最も一般性の高い介在分子種として知られる酸化的ストレスに焦点をあて、生体異物応答に関与する分子種の機能について以下2項目の検討を進めた。尚、チオレドキシン(Trx)過剰発現(Tg)マウスとTrxヘテロノックアウト(KO)マウスなどの遺伝子変異マウスを陰陽の反応対照とした。 1.酸化的ストレスに対する個本レベルあるいは試験管内試験での検討:(1)昨年度から進めている加齢個体の育成を引き続き行い、若齢個体と加齢個体との比較準備を進める。(2)昨年度の成果に基づき、引き続きTrx-Tgマウスにおける造血幹細胞の分化のヒエラルキーに沿った動態解析を行い、未分化分画から分化に伴い、野生型(Wt)に比べて倍加時間が延長状態にあったものがむしろ短縮傾向に変異することを見いだした。Trx-KOマウスでは、逆に未分化分画での個体内細胞動態が亢進していることを作業仮説として、現在解析準備中である。 2.1.での背景となる分子機構の解析:昨年度の成果に基づき、造血系特異的変動遺伝子群に焦点をあてつつ網羅的遺伝子発現解析を進めた。定常状態における各遺伝型マウス骨髄細胞での検討結果では、Wtに対するTrx-TgないしはTrx-KOでの発現変動に有意な差異が認められかつその変動様式がTrx遺伝子量に依存的であった遺伝子として242probe sets(ps)が見いだされた。また、主要因解析を行い、寄与率で95%がcomponent1に含まれ、骨髄細胞共通のプロファイルと考えられること、Trx-Tg特異的ないしは、Trx-KO特異的なcomponentが存在するが、寄与率は1%前後で、希少細胞に寄与が予想されること、などがわかった。更にGene Ontology(GO)でcell cycle関連遺伝子に分類されている648psを抽出し、WtとTrx-Tgでの発現レベルの比較を行ったところ、42psで両者の間に有意差(p<0.05)をみとめた。このうちcdk4やcyclinD2等を含む36psはTrx-Tgでの発現レベルがWtのそれに比べて少なく、前駆細胞数の減少や細胞動態の抑制を説明する分子背景と考えられ、この点について今後検証を進めたい。
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