研究概要 |
本研究は,皮膚型,粘膜・皮膚型,内臓型の各リーシュマニア症に特異的な診断用抗原を同定し,とくに皮膚リーシュマニア症の簡易診断キットを開発することを目的として計画された。まず,モデルマウスを用いて,感染マウス血清のウエスタンブロット解析を行った。その結果,抗体産生パターンは,接種したリーシュマニアの種類によって異なっていたが,リーシュマニア属に共通な抗原に対しても抗体産生が起こることが明らかになった。次に,エクアドルの皮膚リーシュマニア症患者血清を材料として,ウエスタンブロット法による抗原分析を行った。Leishmania(L.)amazonensis(La)とL.(V.)panamensis(Lp)のpromastigote型虫体の可溶性抗原を用いて,各流行地の患者血清についてイムノブロットを行った結果,L.(V.)panamensis流行地の患者血清は,とくに,分子量約120,95,85および75kDaの抗原を高頻度に認識した。これらの抗原蛋白を特定するために,質量分析装置(Maldi TOF-MS)を用いて得られたペプチド情報をリーシュマニアのゲノム情報と照らし合わせて解析した結果,elongation factor 2(94 kDa), heat shock protein 83(80 kDa),ならびにheat shock protein 70(72 kDa)が診断用抗原候補蛋白して検出された。一方,旧世界のパキスタン南部で新たに発生している皮膚リーシュマニア症の原因虫種はL.(L.)majorが中心であるが,L.(L.)tropicaも一部混在していることを明らかにした。今後は,120 kDaの蛋白を特定するとともに,レコンビナント蛋白を作成し,さらに研究を進めていく予定である。
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