ブラストシスチスは1912年にヒトから見い出されて以来、種々の哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・昆虫類からも見い出されている。これら種々の動物由来のブラストシスチス株は、形態的に類似しているため、それらを区別・分類することが困難であり、様々な動物に寄生するブラストシスチスが一種一属なのか、あるいは異なった種のブラストシスチスがいくつか存在するのかが議論されている。しかし、我々の研究成果から1996年に世界で始めて人畜共通性の株がニワトリに存在することが判明した。その後、ヒトや動物由来のブラストシスチス株間に遺伝子型多型知られるようになり、開発した遺伝子型同定システムにより、ヒトから分離・株化されたブラストシスチス株と同じ遺伝子型を示す株が、ヒト以外の様々な動物由来分離株に見い出された。すなわち、このような遺伝子型に含まれる株は人畜共通感染性のブラストシスチス株と想定され、種々の感染動物がヒトへの感染源となっている可能性が示された。ブラストシスチスは、消化器症状を引き起こす可能性も指摘されていることから、ヒトへの感染源となりうる動物種の同定や人畜共通感染性を実証することは重要なことである。我々は、本研究成果によってラットとモルモット由来分離株を使って、世界で始めてブラストシスチスの感染動物モデルを作成した。このモデルでは、動物間での感染伝播にはシスト型のみが担っていること、糞便内に排出されたシスト型を経口的に摂取することで容易に感染が成立することなどが判明した。本年度は、ヒト由来株の人畜共通感染性を検討するために、種々の遺伝子型のヒト由来株を感染源に用い、これら実験動物モデルへの感染性を調べた。その結果、ヒト由来株の多くの株は、ニワトリのみ、またはニワトリとラットの両方に感染した。従って、本研究によって、ヒト由来ブラストシスチス株の人畜共通感染性が初めて動物モデルの感染実験によって証明された。
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