研究概要 |
原虫感染時にはヘルパーT細胞1型(Th1)が優位となり、蠕虫感染時にはTh2優位になることが知られているが、そのメカニズムにはまだ不明な点も多い。Th1分化には、樹状細胞などが産生するIL-12が重要であると考えられている。我々は、これまでにマンソン裂頭条虫擬充尾虫の排泄・分泌物質(ES物質)が活性化マクロファージの遺伝子発現を制御することを報告してきた。今回、ES物質の樹状細胞におけるIL-12産生への影響を検討した。また、樹状細胞と脾臓由来アロT細胞を共培養し、ES物質によるTh1分化への影響についても検討した。 マウス骨髄細胞をGM-CSF刺激により樹状細胞に分化誘導後、CD11c^+細胞を回収した。その樹状細胞をBS物質で前処理すると、LPS刺激時のIL-12p40や炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-1βの遺伝子発現及びIL-12p40の産生が抑制された。また、ES前処理によって樹状細胞の共刺激分子CD80,CD86の遺伝子発現も抑制された。また、TLR9リガンドのCpGで樹状細胞を活性化した場合でも、ES物質によるIL-12産生が抑制された。異なるタイプの樹状細胞として、マウス脾臓由来の樹状細胞を回収しES物質を処理すると、IL-12産生抑制が同様に認められた。さらに、骨髄由来樹状細胞とアロT cellを共培養し、培養上清中のIFN-γ量を検討すると、ES物質処理樹状細胞と共培養した群は、未処理樹状細胞と共培養した群よりもIFN-γ産生が低かった。一方、骨髄由来樹状細胞をES物質とLPSの存在下で前処理した場合に、CD4^+T細胞との共培養によってTh2サイトカインであるIL-4がわずかに産生された。以上の結果から、ES物質は抗炎症作用だけでなく、Th1分化の抑制に関与していると推察された。
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