研究概要 |
マンソン裂頭条虫擬充尾虫(幼虫)のexcretory/secretory products(ES)中の免疫抑制因子が、CXCL10/IP-10ケモカインの遺伝子発現を抑制することを見出し、この遺伝子発現抑制の機序について検討した。ESはLPS活性化マクロファージのIFN-βの産生を抑制し、ISREを用いたゲルシフトアッセイでは、LPS刺激またはIFN-γ刺激による転写因子の結合を抑制した。また、LPS刺激の場合のNF-κBの核への移行はESによって抑制されていなかったが、Re1Aの転写活性化ドメインの転写活性は阻害された。 次に、ES物質の樹状細胞に及ぼす影響を検討した。マウス骨髄細胞より得た樹状細胞をES物質で前処理すると、LPS刺激時のIL-12p40や炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-1βの遺伝子発現及びIL-12p40の産生が抑制された。また、ES前処理によって樹状細胞の共刺激分子CD80,CD86の遺伝子発現も抑制された。さらに、骨髄由来樹状細胞とアロT cellを共培養し、培養上清中のIFN-γ量を検討すると、ES物質処理樹状細胞と共培養した群は、未処理樹状細胞と共培養した群よりもIFN-γ産生が低かった。以上の結果から、ES物質は抗炎症作用だけでなく、Th1分化の抑制に関与していると推察された。 マンソン裂頭条虫のESから130kDaの免疫抑制因子(ES130)が得られた。このES130は、LPS活性化マクロファージ細胞株RAW264やマウス腹腔マクロファージのNO産生を抑制し、RANTES,MIP-2,KCの3ケモカインとCOX-2,TNF-α,IL-1βの遺伝子発現を抑制した。ES130はこれらの遺伝子発現を抑制し、炎症や免疫反応を阻害すると推察された。
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