マラリア原虫は、蚊の吸血により人体に侵入した後、肝細胞期を経て赤血球期へと移行して症状を現す。一般的には肝細胞期と赤血球期では防御免疫の仕組みが異なると考えられている。しかし、多くの原虫遺伝子が肝細胞期と赤血球期両者共に発現されることから、赤内型原虫に対する防御免疫が肝細胞期に対しても有効である可能性について検討した。 マウスマラリアP.yoelii弱毒株感染から治癒したC57BL/6マウス(治癒マウス)は、強毒株感染に対しても抵抗性を示す。治癒マウスに強毒株のスポロゾイトを感染させたところ、原虫血症は全く出現しなかった。肝細胞期での防御が示唆されたため、防御免疫機構を解明する目的で、治癒マウスの脾細胞から抗CD8抗体、抗MHCクラスII抗体と補体処理、さらにナイロンウールカラムによりCD4陽性T細胞を集め(精製率70〜80%)、ナイーブC57BL/6マウスに受け身移入した。このマウスにスポロゾイトを感染させたところ、原虫血症は全く出現しなかった。一方、感染赤血球を静注すると原虫血症が出現した。以上のことから、治癒マウスはスポロゾイト感染に対して、肝細胞期においても感染抵抗性を示すこと、またこの抵抗性は抗体ではなく主として細胞性の機序によることが示唆された。 マラリア原虫感染マウスの免疫応答制御機構に関しては、感染マウスと非感染マウスから各々樹状細胞を精製し、その性状を解析した。CD11c、CD80、CD86、MHCの発現については特に違いを認めなかった。LPSで刺激した場合のサイトカイン産生では感染マウス樹状細胞はIL-12産生の低下とIL1-10産生の上昇を認めた。抗原提示能については、両者の間で著名な差異は認めなかった。樹状細胞のサイトカイン産生の違いの機序と、その防御免疫応答における意義については現在解析中である。
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