研究概要 |
マラリア原虫は哺乳動物の体内に侵入後,直ちに肝細胞に至りここで増殖するといわれているが,他の臓器への侵入・増殖は起きていないのか,また肝臓に至るまでの原虫の移動はどのようになされているのか,この2点については十分解明されてはいない。我々はレポーター遺伝子を組み込んだトランスジェニック・マラリア原虫(Plasmodium berghei)を作製して,ハマダラカを介してマウスに注入し,生体内における原虫の分布・増殖を画像化あるいは定量化しようと努めている。本年度は目的とする遺伝子を含むプラスミドを,効率よく野生型原虫に組み込み,トランスジェニック原虫をクローン化する方法の確立に努めた。成果としてこれまでに,ルシフェラーゼのほかGFPを発現するトランスジェニック原虫の作成に成功した。ルシフェラーゼ・アッセイ法により,マウス血流中では原虫濃度0.01%で検出できる感度を得た。このトランスジェニック原虫をハマダラカに吸血させて,蚊の体内でのスポロゾイトの発育や移動,特に唾液腺における局在や吸血に伴う挙動などの知見を得た。すなわちスポロゾイトは,蚊の唾液腺の側葉遠位部より侵入し,唾液腺細胞を経てクチクラ層のない腺管遠位部より管腔内に至る。側葉近位部より侵入したスポロゾイトは,クチクラ層にはばまれて唾液腺管腔内には侵入できない。
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