研究課題/領域番号 |
16590345
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
寄生虫学(含衛生動物学)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
吉田 栄人 自治医科大学, 医学部, 講師 (10296121)
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研究分担者 |
野田 博明 独)農業生物資源研究所, 昆虫適応遺伝研究グループ, 昆虫共生媒介機構研究グループ長(研究職) (40343991)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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キーワード | マラリア / ハマダラカ / トランスジェニック / 唾液腺 / CEL-III / Plasmodium / Anopheles / レクチン |
研究概要 |
我々はハマダラカAn.stephensiの唾液腺タンパクを同定し、この遺伝子の上流に存在するプロモーター領域をDsRed遺伝子上流に連結したMinos transformation plasmid vectorを作製し、An.stephensi卵にインジェクションした。確立したトランスジェニックハマダラカの唾液腺は、蛍光顕微鏡下(Texas red filter)で観察すると非常に強い赤色蛍光を放っていた。その部位はlateral lobeの末端部で、スポロゾイトが侵入すると予想されている部位と一致していた。本研究は、ハマダラカの唾液腺に外来異種タンパクを発現することに成功した初めての例であり、今後、マラリア原虫を媒介しないハマダラカの作製およびハマダラカ唾液腺および唾液におるマラリア原虫の生物学的寄生適応性を解明する非常に大きな手段となると期待される。 マラリア原虫を伝搬しないトランスジェニックハマダラカの作製を目的とし、なまこの一種であるグミから単離されたレクチンCEL-III遺伝子を導入した。CEL-IIIは強い血液凝集・溶血活性をもつ分子であり、マラリア原虫がハマダラカ中腸内に入ってきたタイミングに合わせてCEL-IIIを中腸内に分泌できればマラリア感染赤血球が凝集・溶血を起こし、受精を完遂できず、ライフサイクルを断ち切ることができると期待される。そこで我々は、吸血誘導性のカルボキシペプチターゼプロモーター下にCEL-III遺伝子を導入したCEL-IIIトランスジェニックハマダラカを作製し、実験を行なった。CEL-IIIの血液凝集・溶血活性には種特異性があり、ヒト、ラット赤血球を溶血するが、マウス赤血球は溶血しない。それ故、P.berghei-ラット感染系を作製し、CEL-IIIトランスジェニックハマダラカに吸血させた。10日後に中腸を解剖して、オオシスト数をカウントし、コントロールハマダラカと比較した結果、オオシスト形成数が有意に低下し、伝搬阻止率が91%に達した。また、今までに報告されているマラリア非媒介トランスジェニックの効果はネズミマラリアに限定されており、実際のマラリアベクターコントロールには新たなトランスジェニック作製が必要と考えられていた。CBL-IIIトランスジェニックは、オオシスト伝搬阻止率も高く、さらにこの効果はすべてのヒトマラリア原虫株・種に有効であると予想され、CEL-IIIトランスジェニックはマラリアベクターコントロールとして大いに期待される。
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