Entamoeba invadensのin vitro脱嚢系を用い、今年度は以下の研究を行った。1.cytochalasin Dの脱嚢・発育に及ぼす効果:アクチン重合阻害剤cytochalasin Dがアメーバの嚢子形成を抑制することは既に明らかにしたが、脱嚢・発育に対する効果を調べた結果、予想に反し両過程を促進することが判明した。即ち、脱嚢誘導後5hrという時間ですでに脱嚢した虫体数は対照に比し有意に増加しており、その後対照との差は著しく拡大した。また、この脱嚢促進効果は0.1μMという低い濃度でもみられた。一方、他のcytochalasin A、B、Eおよびdihydrocytochalasin B (dB)についてもその効果を調べた結果、A、B、dBによる促進効果はほとんど認められず、Eは10μMで抑制効果を示した。cytochalasinは化学構造上の基本骨格を共有し、とりわけcytochalasin DとBの違いはわずかである。それ故、その化学構造と機能の関連を明らかにするうえでも興味深い。現時点でこの促進機構は不明だが、cytochalasin Dによる脱嚢促進は脱嚢関連遺伝子を調べるうえで重要な系になりうると考えられた。2.システインプロテアーゼ阻害剤の脱嚢・発育に及ぼす効果:アメーバの嚢子壁はキチンとタンパク質から成り、脱嚢時嚢子壁に穴を開けるため、これらを破壊する必要がある。そこでまずシステインプロテアーゼ阻害剤の効果を検討した。用いた6種の阻害剤のうちZ-Phe-Ala-DMKおよびEST(E-64d)が濃度に依存してアメーバ虫体数を減少させた。嚢子の生存率には影響を及ぼさず、発育に対してもこれらの阻害剤は阻害効果を示したことから脱嚢・発育への関与が示唆された。3.二次元電気泳動(2・D)による脱嚢のプロテオーム解析:嚢子および脱嚢直後のアメーバを可溶化し2-Dで比較した結果、それぞれに特有なスポットが認められた。
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