研究概要 |
Entamoeba invadensのin vitro脱嚢系を用い、今年度は以下の研究を行った。1.胃液および腸液のアメーバの脱嚢・発育に及ぼす影響:アメーバのヒトへの感染型である成熟嚢子は経口摂取され小腸で脱嚢する前に、胃液および腸液に曝される。これがその後の脱嚢・発育に及ぼす効果について調べた。人口胃液(artificial gastric fluid : AGF)として0.5%ペプシン塩酸(pH1.8)を、人口腸液(artificial intestinal fluid : AIF)として1% pancreatin/5% ox bile (pH8.0)を用いた。その結果、嚢子をAGFで37℃、30分あるいは60分前処理することにより、脱嚢が促進されることが判明した。26℃で前処理したときには脱嚢促進効果は認められなかった。脱嚢後の発育に関してはわずかな促進効果が認められた。この結果から、AGF(37℃)は脱嚢を促進するが、AIFは逆に含有するbileにより抑制的に作用することが明らかになった。2.ProteinChip/SELDI-TOF MSによる脱嚢・発育の解析:ProteinChip/SELDI-TOF MSシステムは蛋白質解析に適した様々な化学的性質を表面に持たせたProteinChipと測定に用いられるReaderおよび測定・解析に使用されるソフトウエアから構成され、様々の試料から、ProteinChipに対するアフィニティーを利用して目的蛋白質を捕捉し、その質量数を測定するシステムである。Chip上で簡便に蛋白質の解析ができ、少量の試料から短時間に結果を得ることができる利点を有する。今回、E.invadensの嚢子、脱嚢したアメーバ(metacystic amoeba)および栄養型虫体の細胞抽出液を調製し、これを弱陽イオン交換体の表面性質を持つCM10をProteinChipとして用い、2,000-20,000Daの質量範囲で解析した。その結果、嚢子からmetacystic amoeba、さらに栄養型虫体への変化の過程が蛋白質ピークの変化として捉えられ、この方法の有用性が明らかになった。
|