研究概要 |
炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン18は感染・炎症の初期から終息に至る全ての段階で重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。我々は、IL-18がマラリアの感染時にIL-12の共存下でγ型インターフェロンの産生を介して一酸化窒素や活性酸素、あるいは腫瘍細胞壊死因子(TNF)などの産生を誘導する事で宿主に感染抵抗性を与えている事(Singh R.P.,et al.,J.Immunol.,2002)(Nagamine Y.,et al.,Trans.R.Soc.Trop.Med.Hyg.,2003)しかし、過剰な反応が誘導された場合には正常な組織や細胞に組織傷害を誘導する事も報告してきた(Shimmyo A.-K.,et al.,J.Immunothera.,2002)(Kaneda M.,et al.,J.Interferon Cytokine Res.,2003)。しかしながら、最近の研究からIL-18は単独では、T細胞、NK細胞、マスト細胞に作用してIL-4,IL-10,IL-13等の抗炎症作用を持つサイトカインの産生を誘導するユニークなサイトカインである事が明らかになってきた(Kashiwamura S.,et al.,J.Immunothera.,2002)。この様な経緯からIL-18が炎症の制御という観点においても重要な役割をはたしていると考えその作用を解析した。その結果、炎症性疾患である子宮内膜症患者の腹水中でIL-18が高値を示す事が明らかとなった(Oku H.,et al.,Hum.Reprod.,2004)。この疾患では炎症部位に浸潤したリンパ球がIL-18を産生し、周囲の非免疫系の間質細胞がIL-18の受容体を発現している事、同時にこれらの細胞がCox-2遺伝子を発現している事が明らかとなった。この結果はIL-18が種々の細胞に作用してプロスタグランデインE2を産生誘導し、TNFαなどの炎症性サイトカインを抑制している可能性を示唆するものと考えられた。また、IL-18にはその単独の作用として、癌細胞の転移抑制効果を示す事が我々の研究で示されており(Okamoto T.,et al.,J.Interferon Cytokine Res.,2004)、この結果はIL-18が感染、炎症、癌細胞の拒絶といった様々な状態での個体の抵抗性獲得機構にとって重要な因子であることを示唆するものと考えられた。
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