研究概要 |
病原真菌カンジダはエイズや免疫抑制剤等の投与によって免疫力の低下した患者に対して重篤な深在性感染症を起こすため問題となっている。我々はカンジダについてゲノムワイドな研究を進め生物学的に深く理解することにより優れた抗真菌薬標的遺伝子の開発を目指している。カンジダ属のうち患者から最も高頻度で分離されるのはCandida albicansであり,次にC.glabrataである。最近C.glabrataの症例が増加傾向にあり特に問題となっている。C.glabrataは、分子分類学的にパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)に近縁であるので、S.cerevisiaeにおいて蓄積されているゲノム情報やその他、膨大な基礎研究データと比較することによりC.glabrataの遺伝子機能を予測することができる。16年度にはC.glabrataのゲノムライブラリーを作製し、シークエンスを決めS.cerevisiaeのゲノム情報と比較することによりプロモーター領域を推測した。次にプラスミド上のプロモーター領域を人為制御型プロモーターに置換、PCR法により人為制御型プロモーターを含むDNAカセットを増幅、そのPCR産物を用いてC.glabrataの形質転換を行った。17年度は、全ゲノム情報が公開されたので、それに基づきPCRプライマーを設計し、DNAカセットを増幅することができた、そのDNAカセットを用いてC.glabrataの形質転換を行った。これらの方法を用いて人為制御型プロモーターを挿入した組換え菌株を183遺伝子について作製した。現在、これらの組換え菌株を用いて、in vivoで生育に必須な遺伝子を同定している。
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