腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)は長年にわたり日本国内における食中毒原因の上位を占めている。われわれは患者由来腸炎ビブリオRIMD2210633株の全ゲノム配列決定の結果、臨床分離腸炎ビブリオのゲノム上にこれまで知られていなかったIII型分泌装置(TTSS)遺伝子群が2セット(TTSS1およびTTSS2)存在していることを明らかにした。本研究では腸炎ビブリオに新たに見出されたこれらTTSSの機能および病原性への関与について研究を行った。 本年度得られた研究成果は以下である。 1.TTSS1依存的な細胞毒性により細胞はアポトーシスを起こす。 2.TTSS1依存的に分泌される蛋白のうち、VP1680にコードされる蛋白が細胞毒性に関与している。 3.CaCo-2細胞はTTSS2依存的に障害を受ける。 4.TTSS2依存的に分泌される細菌蛋白が複数明らかになり、そのうちVopTが部分的にではあるが、TTSS2依存的なCaCo-2細胞に対する細胞毒性に関与していることが示された。 5.TTSS2関連遺伝子の遺伝子発現制御に関わる遺伝子、トランスロコンと考えられる遺伝子、およびmolecular switchと考えられる遺伝子を明らかにした。 以上のように、本研究により腸炎ビブリオに新規に見出された2セットのIII型分泌装置の機能や責任遺伝子のおもだったものを明らかにすることができた。この成果をもとに今後本装置の病原性への関与の詳細について明らかにしていきたい。
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