研究課題
平成16年度の結果より、A型およびB型菌培養上清には、ヒト腸管上皮細胞のtight junction(TJ)機能を低下させる物質が存在していることが明らかになった。そこで本年度はB型菌培養上清の硫安沈殿画分より、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびlactose beadsによるアフィニティークロマトグラフィーなどで分画してTERを低下させる活性を測定した結果、16S素南画分にTJ機能低下活性があることが明らかになった。B型16S毒素は、細胞障害性を示すことなく用量依存的にTJ機能を低下させることが明らかになった。透過電子顕微鏡により細胞間接着装置の形態を観察したところ、16S毒素処理により、TJの特徴である細胞間腔の閉鎖構造が消失し、細胞問に間隙が生じていることが明らかになった。さらにコンフォーカル顕微鏡を用いた観察よりTJの構成成分であるoccludinおよびbeta-cateninの局在が著しく乱れていることが観察された。またapicalからbasolateralへのFITC dextran 10k、40k、500kのparacellular fluxを測定した結果、すべての分子量のFITC dextranでB16S毒素添加によるparacellular flnuxの亢進が観察された。この現象がin vivoにおいても観察されるかどうかについて、マウス結紮腸管の系を立ち上げて解析した。その結果、in vivoにおいても16S毒素成分によって、paracellular fluxが起こることが確認された。以上の結果より16S毒素はin vitroおよびin vivoにおいて腸管上皮細胞のTJを開いて、高分子量分子のparacellular fluxを亢進することが明らかとなった。
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