研究概要 |
Clostridium属細菌のコラゲナーゼ(CloCols)のC末端には、細胞外マトリックスの主成分である不溶性コラーゲンに結合するためのドメイン(CBD)が存在する。昨年度の本研究により、遺伝子進化の過程でCBD領域の複製・欠失が繰り返されたことが明らかとなった。CBDの起源を探るため、生命情報科学的検索を行ったところ、Proteobacteria由来の金属プロテアーゼにCloColsと同様のドメイン構成を見いだした。そのC末端に存在するPPCドメインはCBDと構造的に類似していたが、CBDに共通に存在するN末端リンカーと基質結合性残基を欠いていた。PPCと共通の起源を有する単純なドメインがコラーゲン結合に必要な構造を獲得し、CBDに進化したと考えられた。(平成18年3月3日J Bacteriol誌に投稿)N末端側リンカーによるCBDとCa^<2+>の結合を等温滴定型熱量計を用いて解析したところ、CBD 1molあたりCa^<2+>2molの結合が見られた。解離定数は2.13μMおよび4.63μMであり、細胞内外のCa^<2+>濃度の中間であった。Ca^<2+>の有無とドメインの安定性を熱変性により検討したところ、Ca^<2+>非存在時は48℃で変性が始まったが、Ca^<2+>存在下ではドメイン構造は82℃まで安定であった。CloColsが細胞外に分泌された後、CBDはN末端リンカーによりCa^<2+>を結合してドメインを安定化することが確認できた。種々の二価カチオンの存在下でCBDの結晶化を試みたところ、Co^<2+>の存在下でN末端側リンカーが新たなコンフォメーションをとることが見いだされた。(投稿準備中)水溶液中でのコンフォメーション変換過程を詳細に検討するため、^<15>N,^<13>C標識したCBDを作製してNMR解析を行ない、現在主鎖の約70%のシグナルの帰属が完了した。
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