Toll様受容体(TLR)はDrosophilaのTollに対する哺乳動物のホモログとして発見され、微生物細胞の構成成分を認識して自然免疫の中心的役割を果たす受容体分子として現在最も注目されている。我々はこれまでに、2-aminopurine(2-AP)がTLRシグナルによりMyD88非依存的に発現誘導されるIFN-βの産生を強く抑制することにより誘導型一酸化窒素合成酵素の発現を抑制することを見出している。本研究ではこの2-APによる阻害に関してさらに詳細に解析を行った。 マクロファージ様細胞株RAW264において、2-APはLPSおよびpoly I:C刺激によるサイトカイン産生を調べたところ、LPS、poly I:C刺激によるIL-6産生は2-APにより強く抑制されたのに対し、TNF-α産生に対する抑制は部分的であった。LPSおよびpoly I:C刺激においてはNF-κB、IFN-βプロモーターおよびISREプロモーター配列が活性化されるが、2-AP添加により、NF-κBの活性化に関しては部分的に、IFN-βおよびISREに関してはほぼ完全に抑制された。さらにHEK293細胞にTBK1を過剰発現させた場合に起こるIFN-βプロモーター活性の上昇は2-AP添加により有意に抑制された。以上のことから、LPSおよびpoly I:C刺激において、2-APはTLRシグナル経路のうちTBK1の下流で阻害効果を示すことが明らかになった。 2-APに類似の構造を有する化合物について、TLR刺激によるNO産生に対する効果について検討したところ、いくつかの9-banzyladenine誘導体が2-APよりも低濃度でLPS刺激によるNO産生を阻害することが明らかになり、2-AP同様、TLRシグナル阻害剤のリード化合物となる可能性が示唆された。
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