研究課題
抗酸菌細胞壁表層成分の宿主に対する生物学的活性を免疫原性(抗原決定基、液性および細胞性免疫)、炎症惹起や抗菌防御の視点から解析し、新規診断・治療候補として抗酸菌細胞壁糖脂質や蛋白質の可能性を探索した。Mycobacterium avium complex (MAC)特異的糖脂質蛋白質を抗原とした血清診断はヒトMAC感染症に高い特異性や感度を示した。現在、関西地区を中心として血清診断キット(試作)による多施設臨床試験が進行中である。結核菌や弱毒ウシ型結核菌(BCG)などから抗酸菌特異的DNA結合蛋白質(MDP1、分子量28kDa)を精製、遺伝子の塩基配列を決定、生物学的意義を解析した。抗酸菌表層MDP1は宿主細胞表面に存在するグリコサアミノグリカンに結合した。抗酸菌-宿主細胞の接着・侵入は抗MDP1抗体やグリコサアミノグリカン(特に、ヒアルロン酸)で阻害されたことから、MDP1-グリコサアミノグリカン相互作用を介して、結核菌が宿主細胞に接着・侵入している。マウスを用いたin vivo感染実験結果から、抗MDP1抗体やグリコサアミノグリカンの結核菌感染前、或いは、感染後投与は感染生菌数を有意に減少(約1-3/10)させ、予防・治療の両者に有効な介入手段であることが判明した。次に、MDP1を標的としたワクチン開発に着手した。MDP1単独やMDP1-DNA複合体でマウスを前免疫し、その後、結核菌を接種し、菌数や免疫学的指標からワクチン効果を評価した。MDP1-DNA複合体前投与により、菌数を有意に減少(約1/5)させた。なお、MDP1単独では菌数滅少効果を認めなかった。MDP1-DNA複合体の免疫学的作用機序を解析したところ、1)抗MDP1抗体および2)interferon-γ産生誘導が認められた。すなわち、MDP1を分子標的とした介入は新規治療・予防戦略として有望である。
すべて 2005
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