研究課題/領域番号 |
16590371
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
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研究分担者 |
田口 晴彦 杏林大学, 医学部, 助教授 (20146541)
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 助手 (90255406)
花輪 智子 杏林大学, 医学部, 助手 (80255405)
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キーワード | ヘリコバクター / クオラムセンシング / オートインデュサー / 運動性 / 変異株 |
研究概要 |
H.pyloriにおけるAI(autoinducer)-2依存QS(quorum sensing)の役割を明らかにする目的でAI-2の産生に関与するLuxSをコードする遺伝子を不活性化し、AI-2を産生しない変異株HP06株を得た。感染性を野生株TK1402株と比較する目的でluxS変異株HP06をスナネズミに投与し、胃内菌数および病理組織学検査を行なった。投与1週間後ではHP06株感染スナネズミ胃粘膜における一過性の生菌数の減少が認められたが、その後12週まで胃内でのH.pyloriの増殖が認められた。一方、HP06株感染スナネズミ胃粘膜において投与後に検出菌数が低下した後、HP06株の増殖は認められなかった。また、TK1402株の感染12週後に胃体部でのびらんが観察され、強い炎症性の細胞浸潤、粘膜下組織にリンパ濾胞の形成が認められたが、HP06株を感染させた場合には変化が認められなかった。これらの結果はluxSが感染後、胃内で増殖するのに必須であることを示している。HP06株投与スナネズミの12週間の血中抗体価は菌を投与しない群とほぼ同等であった。 H.pyloriの感染成立までの過程において、初期に重要な役割を担っている種々の因子のうち酸耐性、細胞への付着性、VacA産生性などの点においてHP06株とTK1402株では有意な差が認められなかった。一方、HP06株に顕著な運動性の低下が認められた。TK1402株のluxSを変異株HP06株の染色体に再度組み込む相補性試験を行った結果、complemented strain株(HP06Rv株)が得られた。HP06Rv株の運動性は完全に回復し、TK1402株のそれと同等であった。以上の結果からluxS変異によるスナネズミにおける病原性の低下は運動性の低下によるものと考えられた。現在、HP06Rv株のスナネズミにおける病原性に関する実験が進行中である。
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