本研究で取り扱うHaemophilus influenzaeは細胞内寄生菌であと報告され、我々の研究からも本菌種が細胞内寄生であることを明らかにした。細菌性感染症発症の初期の感染防御に、好中球(PMNs)が重要な役割を果している。具体的には、PMNsは細胞外で増殖する病原菌を産生する活性酸素、または貧食後リソソーム内の殺菌物質による殺菌機序が知られている。細胞内に寄生しているH. influenzaeは、PMNsのこのような機序では殺菌されない。このPMNsには少なくとも2種類のsubpopulationがあり、これら2種類のPMNsのmRNAの相対的量比較を、microarrayによって行った。その結果、Gr-1^<high>PMNsのIL-15 messengerRNA量がGr-1^<low>PMNsに比べ有意差をもって多いことが明らかとなった。この成績はRT-PCRによっても確認された。このIL-15はNK cellを活性化することにより、細胞内寄生病原体の殺菌に関り、感染防御上重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで、IL-15KOマウスを購入し、H. influenzaeによるマウス腹腔内および気管支感染モデルを用いて、本菌種感染においてIL-15が重要な感染防御の役割を果たしていることを明らかにした。さらに、in vitro食殺菌系を用いて、IL-15がどのような役割を果たしているかを検討した。その結果、本菌種による感染発症においてもIL-15が感染防御因子として働いていることが明らかとなった。これら内容を現在、Journal of Immunologyに投稿中である。さらに、本菌種がPMNsやDCに侵入した状態で一定時間生存することから、髄膜炎を発症する場合には原発巣でDCに侵入した本菌が血流を介してBBBを通過すると考えた。この仮説に基づき、菌の侵入したDCはTNF処理したhuman brain microvascular endothelial cell単層培養細胞を無処理の単層培養細胞に比べ4倍以上通過し易いことを明らかにした。
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