Epstein-Barrウイルス(EBウイルス)は正常Bリンパ球を不死化してLCLと呼ばれる細胞に変換する。ウイルスの核蛋白質EBNA3AはBリンパ球不死化に必須であることが明らかになっている。Bリンパ球不死化におけるEBNA3Aの作用機序を明らかにするため、EBNA3Aをオン・オフできるコンディショナル組換えEBウイルスを作製し、このウイルスを用いてBリンパ球を不死化してLCLを作製した。このコンディショナルEBNA3A LCLはEBNA3Aオンの状態では増殖したが、EBNA3AをオフにするとLCLの増殖は停止した。 細胞周期の解析から、EBNA3AをオフにするとS期、G_2/M期の細胞が減少することが明らかになった。そこで、EBNA3Aオン・オフの状態で細胞周期の調節に関わる蛋白質の発現について比較検討を行った。cdkインヒビターであるp16^<INK4A>の発現を検討したところ、EBNA3Aオフによりp16^<INK4A>の発現が誘導されることが明らかになった。この結果から、EBNA3Aはp16^<INK4A>の発現を抑制することにより、LCLの持続的増殖に寄与していることが示唆された。 EBNA3Aは、宿主のDNA結合蛋白質であるRBP-Jκと結合して転写調節因子として機能することにより、LCLの増殖に寄与することが明らかになっている。EBNA3Aにより発現誘導あるいは発現抑制される宿主遺伝子の同定を試みた。コンディショナルEBNA3A LCLをEBNA3Aオンあるいはオフの状態で培養してRNAを単離し、宿主遺伝子発現プロファイリングを比較解析した。その結果、EBNA3Aにより発現誘導される宿主遺伝子13個、EBNA3Aにより発現が抑制される宿主遺伝子を41個を同定した。
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