研究課題
基盤研究(C)
新規に発見された未知遺伝子の機能探索へのウイルスベクターの応用、特にcDNAライブラリーの様に多種類の遺伝子を発現する複数のベクターを効率的に作製する方法として、本研究では部位特異的組換え酵素による「遺伝子置換反応」を応用した全く新しいベクター作製法の開発に向け、E1遺伝子置換型アデノウイルスベクターを例に、置換反応の効率と精度の検討を行った。本法は、Cre発現293細胞で複製しているrecipientウイルスゲノム上のloxP(L)と変異型loxP(V)の間の領域とdonorプラスミドの目的遺伝子を置換する方法であり、得られたウイルスをCre発現細胞で数代継代し目的ウイルスの濃縮を行う。そこで1代目の目的ウイルス生成効率すなわち置換効率を検討した結果、その効率はrecipientウイルスの感染量が少ないほど高いことが明らかになり、細胞あたりのウイルス感染量が0.5では全てのウイルス中の約1/4が目的ウイルスであった。その後4回継代を繰り返すことにより90%以上が目的ウイルスへと濃縮された。またrecipientウイルス上のLとV間は約30kbまで離れても遺伝子置換反応が可能であったものの効率は若干劣る傾向が認められた。一方その精度に関しては、Vを欠失したdonorプラスミドを用いた検討から、1代目のウイルス中には目的のウイルスしか認められなかったものの、そのウイルスを3回継代を繰り返したところマーカーとしてdonorプラスミド上に挿入していたGFPを発現するウイルスが出現した。そこでこのGFP発現ウイルスを限界希釈法で単離して構造解析を行った結果、ウイルス生成の途中のdonorプラスミド挿入段階で非特異的に一部が切り落とされたウイルスと複数のDNA断片が非特異的な組換えを起こしたウイルスであると考えられた。遺伝子置換反応の条件検討により置換反応の効率化を図り継代数を抑制することが出来れば、精度の上昇は可能であると考えている。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Nucleic Acids Res. 33
ページ: e76
Microbiol Immunol. 49
ページ: 559-570
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