研究概要 |
単純ペスウイルス(HSV)のUS2遺伝子産物の機能は明らかではない。 HSVと同じαヘルペスウイルス亜科に属するPRVのUS2はプレニル化されていることが報告されている。プレニル化は脂質修飾の一つで通常はC末端がCAAXという配列で終わる蛋白質を基質とし、蛋白質の細胞内局在を制御したり蛋白質の活性調節や蛋白質間の情報伝達などの役割をする。HSV-US2のgene searchからN末37番目に可能なPrenylation siteがある。HSV-US2がプレニル化されているのか検討した。HSV2-186株をVero細胞に感染後プレニル化阻害剤であるロバスタチンの存在下で培養し、western blottingを行った。ロバスタチン存在の有無にかかわらず合成されたUS2の移動度は同じであったことから、Vero細胞においてHSV2のUS2蛋白はプレニル化されていないことが示された。 US2 -lacZ insertion mutant(US2Δ)を用いてUS2の病原性を検討した。今までの研究からUS2Δはi.p,foot pad接種では親株とほぼ同様の病原性を示す。今回、4週齢のBalb/Cマウスに1×10^6PFU/mlのウイルスを10μl経鼻接種し、5日後に還流固定し免疫染色によりウイルス抗原分布を調べた。 HSV2 US2Δは嗅神経では増殖しているが、中枢神経への侵襲は観察されない。野生株186は嗅神経を介しての、中枢神経への侵襲が認められた。 どちらのウイルスも三叉神経には感染増殖し三叉神経を介して、中枢神経に侵襲し脳幹へ達している。脳幹での感染細胞数はHSV2 US2Δでは少なく、野生株186に比べ1/2程度である。これはHSV2 US2Δが中枢神経への侵襲が遅れているだけなのか、感染6日目以降の観察が必要である。 ここまでの研究結果からPRVと異なりHSV2 US2はVero細胞でプレニル化されない。in vivoの実験からUS2は神経侵襲性に関与していることが示唆された。今後、神経細胞でのUS2の分布や生体内での神経侵襲性についてさらに検討していきたい。
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