私達は単純ヘルペスウイルス(HSV)のUS2遺伝子産物はウイルス粒子を構成するテグメント蛋白であることなどを明らかにしてきたが、その機能は未だ明らかになっていない。神経細胞内でHSVカプシド蛋白はテグメント蛋白と一緒にマイクロチュブルス上を移動するという報告がある。 今回の研究ではUS2欠損HSV(US2Δ)とNGFによって分化誘導されるPC12細胞を使用してウイルスと神経細胞の相互作用を検討した。PC12細胞にUS2Δあるいは野性株を感染させ、蛍光抗体法によりUL18カプシド蛋白、VP16テグメント蛋白とチュブリンとの細胞内局在性について調べたところ、US2Δと野性株間でほとんど違いはみとめられなかった。 次に、マウスでのUS2遺伝子の病原性へのかかわりを調べるためにBALB/CマウスにUS2Δおよび野性株を経鼻接種したところ、生存日数にわずかながら差が認められた。 感染後5日での免疫組織染色では野性株(186)接種群は嗅神経から嗅球への侵襲がみられた。 しかしながらUS2Δ感染マウスでは嗅神経でウイルス抗原が認められるものの嗅球へ侵襲は認められなかった。感染6日後も同様の結果を示した。三叉神経核では両ウイルス感染マウスにおいて陽性所見が認められた。 これらの結果からウイルス経鼻接種後の神経侵襲ルートは(1)嗅神経から中枢神経へ侵襲(2)三叉神経から中枢神経へ侵襲するルートがあり、US2Δウイルスは(1)のみであることが示唆された。
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