研究課題
古くから経口免疫寛容はその生理作用において認められていたが、現在でもその誘導メカニズムは不明な点が多い。本研究は腸管粘膜における各種抗原提示細胞の中でも樹状細胞に注目して経口免疫寛容が誘導される機序を検討した。マウス腸管粘膜は組織構造上、少なくとも2種類の粘膜リンパ節であるパイエル板(PPs)と孤立リンパ小説(ILFs)が存在する。そこでPPsとILFsと腸管粘膜固有層を実体顕微鏡下で正確に分離し、酵素(コラゲナーゼ)処理によって細胞を単離し、マウスの樹状細胞特異的マーカーであるCD11cを用いてそれぞれの組織から樹状細胞を濃縮しその性状を解析した。興味深いことに、粘膜固有層より得られたCD11c^+画分の殆どは、多核白血球であった。さらに、生化学的組織解析を行ったところ、ペルオキシダーゼと酸性フォスファターゼが陽性であり、エステラーゼ陰性であることが分かった。また透過型電子顕微鏡の観察により細胞質内に高度な結晶構造物が確認された。これらの結果からこの細胞は好酸球に類似したものであることが明らかとなった。この細胞の表層抗原を詳細に検討したところ、Gr-1^+F4/80^+CCR3^+CD11b^+B220^-CD11c^+MHC-II^<+/->であった。この細胞が粘膜面でどのように免疫学的に作用しているかを検討するために、抗Gr-1抗体をマウスに投与して目的の細胞を除去したマウスを作成し粘膜免疫の解析を行った。その結果、経口免疫寛容の誘導が認められなくなった。さらに抗原に感作したこの細胞をマウスに移入することによって経口免疫寛容が誘導された。またこの細胞は脾臓に移動し高レベルのMHC-II分子を発現し、樹状形態を呈していることが明らかとなった。よってこれらの細胞をeosinophilic dendritic cells(EDCs)と命名し、抗原特異的T細胞の抑制性機能を担う新たな細胞であることを見出した。
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