研究課題
基盤研究(C)
本研究課題はTNF-receptor associated factor(TRAF6)欠損マウスで見られる胸腺構築異常と様々な臓器での炎症様細胞浸潤の関連を解析することで、胸腺構築、特に髄質上皮細胞の増殖分化の機構および胸腺上皮細胞による免疫寛容誘導のメカニズムを解明することを目的とした。平成16年度にはTRAF6が胸腺髄質上皮細胞の分化を制御していること、および胸腺上皮細胞のTRAF6が自己免疫寛容に必須であることの証明を目指した。そこでTRAF6欠損あるいは野生型マウス胎仔由来の胸腺ストローマを胸腺を持たないヌードマウスの腎皮膜下に移植する実験を行った。移植したTRAF6欠損胸腺はTRAF6欠損マウスの胸腺と同様に胸腺髄質領域の構築異常が見られた。さらにTRAF6欠損胎仔胸腺ストローマを移植したヌードマウスでは肺、肝臓、膵臓、腎臓に炎症性細胞浸潤を認めるとともに、血清中に自己反応性抗体を有することが判明した。以上の結果より、TRAF6依存性シグナルは胸腺髄質上皮細胞の分化を制御しており、さらには自己免疫寛容の誘導に必須であると結論した。平成17年度は、TRAF6による胸腺構築の分子メカニズムに関してさらに検討すると伴に、免疫寛容に必須なCD4^+CD25^+制御性T細胞の胸腺内分化とTRAF6の関連について検討した。すなわち胸腺髄質上皮細胞分化においてTRAF6により制御されるシグナル伝達の全貌解明を目指して、胸腺上皮細胞におけるTNFレセプターの発現を網羅的に検討した。その結果、TRAF6の上流に位置するいくつかのレセプター候補を得た。またTRAF6欠損マウスの胸腺ではCD4^+CD25^+T細胞が著しく減少しており、TRAF6はCD4^+CD25^+制御性T細胞の胸腺内分化にも深く関与することを発見した。
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