研究概要 |
本年度は、ヒトγδ型T細胞受容体の細胞外領域をそれぞれ大腸菌で発現させ、リフォールディング後、結晶化し、その構造を2.2≠フ解像度で決定した。具体的には、まず、γ鎖およびδ鎖の細胞外領域をそれぞれクローニングし、T7プロモーターを有する発現ベクターに組み入れた。原配列のままでは全く発現が見られなかったため、分子動力学的手法を用いてステムループの除去を行った。さらに、大腸菌コドンインデックスが0.65以上になるようにコドン置換を行い、また、プリファレンスインデックスにより大賜菌型コドン置換も行った。このようにして、γ鎖およびδ鎖を大腸菌1リットル培養で100mg以上の収率で発現させることが可能になった。ここで得られた封入体をグアニジン溶液に溶解し、DTT処理後、アルギニンベースの緩衝液に迅速希釈してリフォールディングを行った。透析後、タンパクの精製を行ったが、その際、pIから判断してpHを5.5に調製し陽イオン交換カラムクロマトグラフィーに供した。さらに、分子篩により最終的な精製を行い、結晶化用タンパク標品とした。結晶化のスクリーニングは、市販のキットと当研究室で作製したキットを用いて行った。その結果、PEG4000ベースの緩衝液でタンパク質が結晶化することが明らかになった。この結晶をインハウスのX線発生装置で解析した結果、3£□xの回折点が得られたため、SPring8で高解像度のデータを採取した。データ解析はワークステーションで行い、次のような統計値を得た。空間群:P21、格子:60.82、77.35、100.12、90.00、95.00、90.00、回折点:314,713、独立回折点:65,401、解像度:1.90、完全性:91.4、重複性:4.8、フィファインメント:15-1.90。以上のようにヒトγδ型T細胞受容体の構造が高解像度で決定できた。
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