発生初期の造血におけるCCケモカインの役割は不明である。2004年当時、ゼブラフィッシュのCCケモカインはdrCCL1のみしか報告されていなかったが、我々はその後、ヒトやマウスの2倍にあたる約50個程度を発見した。その中でターゲットとしたケモカインはdrCCL1、drCCL25L、drCCL19Lの3つであり、これらはそれぞれヒトのCCL27/CCL28、CCL25、CCL19のホモログと考えられた。ゼブラフィッシュ初期胚における遺伝子発現解析により、drCCL19Lは受精直後から、drCCL1は受精後4時間目から、drCCL25Lは受精後12時間目からそれぞれ発現し、CCケモカインが発生の初期段階で何らかの細胞移動に関与している可能性を示唆していた。受精後約20時間目の体節形成期胚を用いたホールマウントin situハイブリダイゼーションでは、これらCCケモカインが発現部位の違いこそあれ、中胚葉由来の内細胞塊(inner cell mass ; ICM)で発現していた。ICMは発生初期の受精後約16時間から2〜3日目までの造血に関わる組織であることから、これらCCケモカインは発生初期の造血に何らかの役割りを果たしているのではないかと推定された。さらに、drCCL1とdrCCL25Lは胸腺原基や前腎(ヒトの骨髄に相当)周辺でも強い発現が確認されたことから、T、Bリンパ球の初期発生にも関与している可能性がある。現在、リンパ球特異的なマーカー遺伝子であるlckやrag2の遺伝子プロモーターとGFP遺伝子を融合させたベクターを初期胚に顕微注入してトランスジェニック・ゼブラフィッシュを作製中であり、これらCCケモカインの遺伝子発現を抑制するモルフォリノオリゴと同時に顕微注入することによって、初期胚におけるリンパ球の動きを蛍光顕微鏡下で観察している。
|