必修化された初期研修の評価法の開発のために、指導医だけでなく患者の評価をも加味した、研修医の到達度の"360度評価"を可能とする評価法を作成するための予備研究を行った。 対象は佐賀大学附属病院で卒後研修を行っている1年目研修医名と、同病院総合外来を受診し、研修医の診療を受けた16歳以上の外来初心患者名。研修医は、米国内科専門医機構の作成した質問紙(PSQ)を用いて研修医の診療への満足度評価を受けた。また外来を監督した指導に、米国イリノイ大学が開発した臨床能力評価スコア(RIME)を用いた、臨床能力評価を受けた。 調査の結果、21名の研修医が、490名の患者によるPSQ、および同数の症例にお.ける指導医のRIMEを獲得した。本結果によって、以下の点が明らかになった。 1.PSQ10項目の信頼性を、クロンバッハα係数による内的一貫性によって検証しえた。 2.PSQスコアに影響を与える因子として、患者の望む医師患者関係があることを明らかにした。 3.研修医ごとの平均PSQスコアとRIME概略評価スコアの相関を検証し、PSQの妥当性確立に寄与しえた。 だが、研修医のパフォーマンスを左右するものとして、研修医の身体的・精神的コンディション、すなわちストレスが挙げられた。研修医のストレスを無視できないことが明らかになったが、その客観的な評価のための方法は今後の課題として残った。 調査期間を通じて成果をまとめることはできなかったが、有効かつ実行可能な360度評価票作成のための問題点を浮上させえた点で、予備調査としての役割を果たしたと考える。
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